大麻物語 シーズン2 3話「EASY MONEY」

大麻物語

覚醒剤の価格

今までは100g単位で買っていた覚醒剤をキロ単位で引き取るようになった今回が初めてのことだったのだ。

シャブは量をまとめると段々と安くなる。

だいたい僕がやっていた時はこんな感じだった。

キロ単位で買うと1gあたり9,000円ほどで買えるのだ。

100g単位で買うと@11,000〜12,000円

10g単位は15,000〜20,000円

1g単位は25,000〜30,000円

それ以下は5万円とかふっかけられる。

微々たる違いと感じるかもしれないが、この価格差は大きい。

おそらくシャブユーザーは日銭を稼いでくるのだ。

そしてそれを全てシャブに使ってしまう。

シャブの副作用で短絡的な思考になってしまっているのだろう。

ギャンブル依存症の患者などと同じ症状だ。

理屈でわかっていることが行動できない。

そのために、お得とはわかっていても、貯金してから大量にまとめ買いする方には滅多にお目にかかれなかった。

風俗や日雇い労働で稼いだ身銭を切ってその日の飯とシャブに全て使ってしまうのだろう。

だから、その上層のプッシャや仲買人なども概ねそのようなキャッシュフローで回っている。

シャブが儲かるシステム

そこにキャッシュの流れをダムでせき止められる一般人が介入するとハイスピードでお金が貯まっていく。

一般的に時間あたりのシャブの消費量は徐々に増していく傾向にあるからだ。

毎日無数のシャブユーザーに一定の数が売れる。

それがマッカーさんクラスの仲買人になると、日に100gさばく時もある。

@15,000円として@9,000円で仕入れたわけだから、グラムあたり6,000円の純利益だ。6,000円×100グラム=週600,000円の不労所得となる。

マッカーさん一人でこの収益である。

同クラスの仲買人を一人増やすたびに週給600,000円の不労所得。

もちろん仕入れ量は増えるが一回あたりの購入量を増やせば購入単価が下がることがあっても上がることはない。

必勝の錬金術のように思えた。

金を稼ぐためにやるのなら、大麻栽培よりはるかに効率的に思えたのだ。

しかしそう計算通りにうまくいかないのが世の中だ。

相手は血の通った人間だ。

シャブが儲からない理由

ただし、100g単位ともなると何百万という金が動く。

仲買人にはその現金の持ち合わせはない。

マッカーさんほどの方でも同様だった。

だから、ネタを預けて後払いしてもらわないといけない。

これが全ての失敗の原因になるのだ。


せっかくいい関係を築いても、持ち逃げされてダメになる。

僕は渡した方が悪いと最近真剣に思っている。

持ち逃げした方が悪いと思うのは浅い考えだ。

このような最前線に性善説を期待するのは間違ってる。

ここでいい関係を築きたいのなら、相手を信用してはいけない。

時間をかけることだ。

その時間を作るためにも距離を置いてけじめをつけなければならない。

人の心の弱さを理解して、簡単に道に反するチャンスを与えてはいけないのだ。

裏切られて怒るなら、裏切るチャンスを与えた自分を責めるがいい。

知り合った当初、マッカーさんは10グラムほど現金で引き取ってくれていた。

それをその日のうちに捌ききる。

彼はハイスピードでドラッグを回転させるトリックスターだ。

僕は毎日のように彼のもとを訪れた。

頻繁に島之内のオフィスを訪ねるリスクを考えると、物と代金を引き換えにしないで、信用して、ある程度の量を預けてしまえば楽になるし安全だ。

だがさっき書いた理由と、ミスターYと辛い別れをしてしまった後だけに、商品を預けることにはなかなか踏み切れなかった。

さらにドラッグの回転数が増すと、セキュリティ上の理由と、何回も訪問しないといけない労力とを、天秤にかけて、ついにまとまった量のネタを預けるようになってしまった。

そこからが終わりの始まりだ。

終わりの始まり

僕は大麻栽培でお金を稼ぎ始めて月商300万円を超えたくらいから、金遣いが荒くなってきた。

もともと貧困への恐怖から大麻栽培を始めたわけだが、その恐怖がから解放されると途端に気が大きくなってしまって、バカげたことだが、もともと贅沢な生活レベルをさらにあげてしまった。

食べたいものを好きなだけ食べたり、車を買ったりし始めると、今の収入では全然足りない。

コンビニで買うスナックが百貨店のケーキとなり、グラム500円の肉が2,000円の飛騨牛になる。さらに車をラジコンのように買い足していくと、お金なんていくらでも必要になる。

飲めば飲むほど喉が乾く不思議な水、それがあぶく銭、”Easy Money”だ。

昔の洋楽の歌詞によく”Easy Money”って出てきてたっけ。

このことを歌ってたんだな。

まぁそんな風にアホな生活に染まりつつある間、あるキッカケがあってシャブの売買をスタートさせたのだ。

そもそも大麻栽培だけやっていればハッピーだったのにどうしてわざわざ危険なことに首を突っ込みたがるのか?

まあそれは僕が馬鹿だからか?そりゃそうだ。

贅沢したいからか?そりゃそうしたい。

そんな単純な理由なら思いとどまることも出来た。

何より映画でしかみたことのない世界を見たかった。

リアルの体験をしたかったからだ。

本を読むだけだはわからない。

実際に自分が登場人物にならないと何もわからない。

これは魂の渇望だ。

自分では止められない。

誰にも止められない。


KNさんとの出会い

2ちゃんねるで盛んに営業活動をしていたときに知り合ったプッシャの一人に、東京のスピーディーさんという方がいる。

その方にも月に数百の大麻を売ることになった。

半年くらいそんな関係が続いたのだが、ある日を境に全く連絡が取れなくなった。

よくあることなので、また何かあったのだろうと深追いはしなかった。

それからしばらく時が流れたある日、スピーディーさんの番号から突然電話がかかってきた。

全くスピーディーさんとは別人で驚いた。

その電話の主がKNさんである。
あのドスの効いた野太い声でいきなり。

「???(スピーディーさんの名前)が飛んでしまいましてね。登録されている電話番号に一斉に電話しているのですよ」

僕は驚いた。

(ほぅ。面白いな。僕の営業スタイルと同じだ)

詳しく話を伺うと、彼はスピーディーさんの上役らしい。

スピーディーさんは彼に借り返さずにいなくなったとのこと。

それを回収をするためにお仕事を頑張っておられる最中なのだ。

彼の仕事に対する熱意というか流儀というものに、共通するものを感じた僕は積極的に彼に対して話し始めた。

大麻の栽培をしていることや、スピーディーさんに大麻を売っていたことなどを。

そこで僕の大麻を買ってください、と切り出したら、千六百円以下でしか買わないと言われてしまった。

いくら品質が良くてもそこは譲れないらしい。

ただし何キロも買ってくれるらしい。

その当時は在庫が貯まる暇もないくらい好評で、投げ売りする理由がないので、そこは丁重に断らせていただいた。

話のスケールが大きいし、この世界の住人にありがちな、余計な自己顕示も全く挟んでこないビジネスライクな物言いに僕は興奮した。

この人は本物だ。

さらなるアクションを起こしてみた。

「飛ばしの携帯電話ありますか?

ただし、持ち主の口座付きのスマートホンです。

口座に入金している限り永久に使えるようなものがありがたいです」

そう言ってみた。

その年、ギャラクシーやiphone4が出た時でスマホ元年の年であった。

これからの営業活動は匿名でラインしたりする必要が生じてくるだろう。

スマホがあるとネットも匿名でできるので非常に便利だ。

プリペイドフィーチャーフォンの飛ばしはあっても、継続的に利用できるスマホの飛ばしはなかなか入手できなかった。

だがさすがKNさん。間髪入れず「用意できますよ」

そう言って代金と銀行口座を教えてくれた。

なんでもとにかくやってみる。

すぐに取引を開始することが必要だ。

躊躇してはいけない。

あとでとか今度とかはお呼びではない。

直感で即決即断。

それこそが最善なのだ。

まず、実績をあげるのだ。

金額や物やサービス。

なんでもいい。

まず、相手と関係を作る。

お金を渡す。もらう。価値あるものを渡す。もらう。

これが基本だ。

人間の判断など高が知れている。

直感、自分の中に住んでいる神に委ねるのだ。


やはりKNさん、これまで付き合ってきた人たちとは完全に一線を画す存在のようだ。

そこでふと頭に浮かんだことを話してみた。

「もし僕がシャブを仕入れたいとしたら、対応してもらえますか?」

あっさり彼はこう答えてた。

「できますよ。葉っぱよりそっちが専門です」と。

「よく考えてまた連絡します」

そう締めくくり電話を切った。

さあどうする?

ここで分かれ道だ

さすがにここは思案のしどころだ!

大麻物語は物語です。ノンフィクションではありません。実在の人物や団体などとは関係ありません。