大麻物語 シーズン2 5話「初めての乾燥大麻大口販売」

大麻物語

iモードの闇サイト

ちょうどSと知り合った少し後のことだ。

1キロ以上の大麻を抱えたまま、焦って違法薬物売買サイトを調べていた。

その当時はi-modeと言うガラケー専用サイトがかなり賑わっていた。

中にはアングラなものもあり、薬物売買掲示板やキメ友サイトがかなり野放しであった。

ある薬物売買の掲示板の中にひときわ大物感を出している書き込みがあったので、大麻を買わないかという営業をかけてみた。

飛ばしの携帯を使って、掲示板に掲載されている電話番号に連絡してみた。

自分は畑をやっています。

バッズを1キロ持っています。

品種はオランダはセンシシードのスカンク#1とビッグバッズ。

それにもうすぐホワイトウィドウが出来上がります。

品質は最高だと、いろんな方々から喜んでいただいてます。

だいたいこんなセールストークだったと思う。

いきなり電話をされて、こんな景気のいい話を持ちかけられたからか、

電話の向こうの男は少し疑っているようだった。

「1キロあるのですか?品質が良ければ全て買い取りますが、まず品質を確認してからです。こちらに大麻のソムリエがいるので、今日の夜、阪神高速の信濃橋を降りた所にサンプルを持ってきてください」

信濃橋

話は決まった。

しかしいつもと違って、何か不安感がある。

長瀬くんが保証してくれた品質の素晴らしさ。

黙ってポンポン注文してくれるSの様子。

そして何より自分で吸ってみて驚きの効能。

この3つの裏づけが僕の大麻の品質を証明している。

客観的にみても現状日本で出回っているバッズの中ではかなり良いものなのだろう。

だから、品質に対する不安は全くなかった。

懸念はそんなところではなく、今回会う人というのがどうやら本職の方らしいということなのだ。

何でそう思ったのか理由を書くことはできないが、何となくやばそうな雰囲気が掲示板の書き込みからも、そして、電話の冷たい声からも伝わってきた。

そのことを弟に話すと流石に今度は付いてきてくれることになった。

心配して付いて来てくれるのは、最初の取引相手である隼さんの時以来のことだ。

緊張する場面はいつも弟にサポートしてもらえる。


さてそろそろ時間だ、スカンク#1のサンプルを持って弟と僕は阪神高速を走った。

「今回の相手はやばそうな奴らや、どうなるかわからんから背中頼むで」

そんなことを話している間に信濃橋の降り口を出た。

弟は車をはるか後方に下げて僕のことを見張っている。

しばらくすると、信濃橋出口から黒いワンボックスが降りてきた。

全面スモークで見るからにイカついやつだ。

電話がかかってきたので話してみると、やはり彼らの車であった。

必死のカーチェイス

僕の目の前に停車してスライドドアを開けて乗り込むとびっくり。

中には悪そうな人がたくさん乗っていた。

まず、見るからに人相風体の悪そうな運転手。

そして助手席には電話の相手の冷たい声で話す人が座っている。

声だけではなく、顔もなんとなく爬虫類っぽい。

酷薄そうな笑みを浮かべて僕に後部座席に座るよう促した。

そして後部座席にはグループの頭らしき男。

たっぷりとした体格と髭そして黒サングラス。

ドラマに出てくるヤクザそのものだ。



車のスライドドアを締めて親分の横に座る。

僕はやばいとこに来てしまったかなと、この時はかなり身構えた。

しかも席に着くや否や、彼らは猛スピードで走り出し中央大通りをぶっ飛ばして行った。

果たして弟はついてこれるだろうか?

そんな心配をよそに、しばらく彼らは世間話をしていた。

まるで僕の存在などないかのように。

その後数分走った後、爬虫類の人が僕に、大麻のサンプルを最後部座席におとなしく座ってる人に渡すように言った。

最後部の席にはヒッピー風の若い男がひっそり座っていた。

こんな所にもう一人いたのか!今まで気づかなかった。

僕が彼に物を渡すと、ちょうど車は元いた信濃橋に戻っていた。

爬虫類の人は親分に

「これでいいですか?」

そうたずねると親分は黙って頷いていた。

今回はどうやらこれで終了のようだ。

結果は後で電話で連絡してくれるらしい。

僕はこんな物騒な車からは早く降りたかったので、これ幸いとささっとおさらばした。

ソムリエのテイスティングの結果

後ろに弟の運転する車があった。

なんとか付いてきていたようだ。

彼らの車が走り去るのを見届けて、弟の車に急いで駆け寄り、乗り込んだ。

開口一番弟が

「おい。大丈夫か?」

「おお。なんともなかったわ」

「急に飛ばし始めたから、何かあったんか思うてびびったで。あいつら車線変更も無茶苦茶やな!ほんで、どうやってん」

「いや、サンプル渡しただけや」

そう言いながら会社に戻る道すがら、車内で何があったのか、

どんな人がいたのかなどを詳しく説明し始めた。

しきりに感心して聞いていた弟は

「ついにヤクザが商売相手になったな。大丈夫か?」

そういうので、

「そら1キロ売ろう思うたら、そんな奴らしかおらんやろ?」

「まぁシャーないな。せやけど気ぃつけてくれよ」

「どうやって気ぃつけるいうねん」

とまぁ、そんな話をしながら工場まで戻ってきた。


工場に着くとすぐに電話がかかってきて、

「今在庫どれだけありますか?」

というので、

「全部集めたら1200gほどあります。物はどうでした?」

そう切り返した。

すると電話口にソムリエ氏が出てきて

「物は80点です」だという。

「どこが悪かったですか?」

いささか自分の作ったものに自惚れていた僕はそう尋ねた。

「乾燥が足りません」

とソムリエ氏。

僕が

「あれ以上乾燥するとバリバリになりますよ?」

そういうと、ソムリエ氏は

「それでいいのです。もっと乾燥してください」

と言うとまた爬虫類の人が出てきて僕に

「ということなので乾燥してください。値段はg1600です。それなら全部取ります」

(えらい安いな)

あんなに大量に在庫を抱えてるのに、Sは10とか20とか相変わらずコシャな注文しか言ってこない。

長瀬くんからもまだ次の注文はこない。

ということで少し焦っていた。

当初の計画では今頃、数百万手に乗っているはずであったからだ。

なのに、あるのはバケツいっぱいの乾燥大麻と少しの生活費。

想定外だ。

僕は

「せめて2000円にならないですか?」

そう言ったが、やはりこいつは爬虫類だ、

「さらに乾燥してg1600円でしか取れません」

そう言ってきた。

僕は仕方なく

「わかりました。乾燥に2、3日ください。できたら連絡します」

そう言って電話を切った。

過乾燥

単価が安いのは残念だが、一刻も早く所持していても罪のない現金にしたい。

すぐに彼らのいう通りバッズを再乾燥した。


その当時、僕たちは大きな段ボール箱を改造してバッズを乾かしていた。

1200x600x600の長細い箱の横に穴を開けダクトを通した。

そのダクトは洗濯物用の除湿乾燥機の送風口とつないである。

中には等間隔で釣り糸がぶら下がっており、その先に洗濯ばさみがついている。

そこにバッズをぶら下げるのだ。

簡単なものだが、普通に乾燥するよりはるかに早く仕上がる。

実は低湿度で自然乾燥する方がいいバッズに仕上がるのだが、作る方としては少しでもキャッシュフローを改善させたい。

となると乾燥やキュアの時間は少しでもカットしたいのが人情だ。


僕は少しでも早くバッズを処分してお金に換えたいと思うあまり、

その日すぐに乾燥機にぶち込みフルマックスで送風して帰宅した。

ところが翌朝会社に来てバッズを見るとびっくり。

なんと大きさが2/3ほどに縮んでいるではないか!

ああ。乾燥しすぎてしまった。

すぐに回収して測ってみると、1.2kgがなんと800gほどに減ってしまっていた。

やりすぎてしまった。

400g減ったということは1600円でも64万だ。

(あーあ、やってもーた)

まぁでも仕方ない。

とりあえず爬虫類の人に電話しないと。


ひとしきり落ち込んでから、爬虫類の人に電話した。

「予定より乾燥が早くで来ました。もしよかったら引き取ってください」

そう言ってみた。

すると今夜すぐに引き取ってくれるようだ。

なんグラムになったのか聞いた来たので、

「乾燥したら半分になりましたよ」

そう言ってやった。

本当は800gと少しあるが、彼らには600しか売らない。

96万円だ。

残りはSと長瀬くんに細々とさばいてもらおうという計算もある。

再び信濃橋

ということでその夜また弟と、600gのカリカリのキャラメルコーンみたいになった乾燥バッズを抱えて信濃橋に来た。

時間通り連絡があって、今度もあの黒ワンボックスに乗り込んだ。

車はすぐ走り出した。

今度は車内にあの親分の姿は見えない。

僕が爬虫類の人に挨拶すると、彼はソムリエにネタを渡すよう言ってきた。

僕は彼の言うままにソムリエにネタを渡した。

ソムリエは袋を開けた。

すると、車中にあのスカンクのものすごい香りが広がった。

やはり僕のネタは素晴らしいに違いない。

そう思ってソムリエに声をかけてみた。

「いいネタでしたでしょう?」

するとソムリエ氏頷いて
「いいネタでしたが乾燥が足りませんでした。でもこれはいいです」

「乾燥させすぎではないですか?」

僕が聞き返すと、

「いえ。これくらいがいいです」

とのことだった。

「ちなみに100点のバッズとはどんなものですか?」

僕が尋ねるとソムリエ氏

「少し前にインポートで入ってきたクッシがすごかったです。それは100点でした」

(クッシか、そんなものがあるのか。それならぜひその種を入れて育てないとな。インポートに負けてたまるか!)

そう心に誓った。

ソムリエ氏が僕のネタに間違いがないことを爬虫類の人に告げると、彼は僕に分厚い封筒を差し出してくれた。

僕は彼に断ってその場でお金を数えさせてもらった。

「確かに96万円受け取りました」

そう言ってカバンにお金をしまいこんだ。

すると、爬虫類の人が

「次はどんな品種ができるのですか?」と尋ねてきた。

まだ信濃橋までは少しある。

「もうすぐホワイトウィドウができます。スカンクより樹脂を吹いてるし、品種的にも強力なので期待できます」

そういうと、彼は怪しい笑顔を浮かべて

「今度は俺が個人的に高く買い取りますよ。2,300円出します。美味しい思いもしてもらわないとね」

そう恩着せがましく言ってきた。

(2,300円で普通やねん)

そう思いながらも、

「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします」

と言っておいた。

帰り道

信濃橋について、大金の入ったカバンを大事に抱え車から降りた。

すると今度もちゃんと後ろで弟が待っていた。

彼らのワンボックスが行ったのを見届けて、後ろの弟の車に乗り込んだ。

車に乗って札束を弟に見せた。

札束を見るとやはり嬉しそうだ。

帰り道、二人で取引の成功を祝い、今後の方針を話し合った。

危険そうな相手との緊張する大型取引が無事終わったのだ。

収穫当初の見込みより大幅な下方修正となったが、Sや長瀬くんそして隼氏など並み居るプッシャたちを相手に生活費プラスアルファを稼ぎ出した。

そして今回96万円、あっという間に合計100万円をはるかに超える現金を稼ぎ出した。

次の大麻の花も熟してきている。

大麻栽培で生活の目処がたつどころか、これから享受できるであろう数々の楽しみにそれぞれ思いを馳せて、僕たち兄弟は束の間の安らぎを得た。

弟がいなければ大麻栽培はやっていなかったかもしれない。

やろうとも思わなかっただろう。

僕には、これだけのことを自分一人で受け止める器はないからだ。

僕は一人で生きているのではない。

だが渦中にいる時は、その大切さに気づいていなかった。


つづく