大麻物語 ワールド牧場編 第1話

大麻物語

今は2019年春。

ツイッターを通勤中に眺めていたらタイムラインに、

モーリーさんのツイート。

「大麻草の栽培工場、ワールド牧場の社長が指示役か」

「住宅街に5億円分!」

それを見て僕は5年前のことを思い出した。

ワールド牧場で大麻栽培しているとの噂を聞きつけ、

仲間のドラッグディーラーMr.TANAKAと弟と3人で、

大麻を吸いながらワールド牧場を探検した時のことを。


思えばあの当時の僕はヤクザに騙され、

詐欺師に騙され、すっからかんどころか、

大量の借金を抱えて首が回らない状態であったのだ。

どうしてあれだけ大麻栽培で潤っていたのにそんな状態になってしまったのか。

そうなった原因は2012年まで時を巻き戻さなければならない。

その頃は、すでに弟も会社を辞め、二人とも違法薬物で生計を立てていた。

弟は大麻の世話とネット通販。

僕は販売と仕入れを担当していた。

その時の生活がどんな様子だったか?

そうだ。こんな感じだったな。

ある大麻栽培者の一日

ある日の僕の1日を紹介しよう。

朝6時に起きる。

まずはゆっくりと洗濯をする。

楽しみながら豪勢な朝ごはんを食卓に並べる。

季節の果物数種類と、世界のチーズにプロシュートやクラッテロをメロンにのせる。

前の晩に仕込んでおいたフレントーストやバケットに火を通す。

サラダには複数の温野菜の葉野菜、キノコ類そしてブランドプチトマト。

その上にペコリーノロマーニョをすりおろす。

本物のオリーブオイルをかけて召し上がれ。

紅茶はおフランスのフレーバーティーか畑指定で購入しているダージリンをその日の気分で。


準備が整ったら、

すっかり体調を壊してしまったかみさんを、優しく起こして一緒にゆっくり朝食をいただく。

食器を片付けたら、身支度をする。

アルマーニのスーツに身を固め、ジェイエムに足を入れネクタイを締めて玄関の全身鏡を見てニンマリ。

今日もいけてるぜ!

家の車庫に留めているM5の助手席を開けてピカピカのゼロハリバートンを助手席に投げ入れる。

ゼロハリの中身はもちろん大麻だ。それも満タンだ。大麻と秤以外何も入っていない。

シャッターのリモコンをオープンにして、エンジンのスタータースイッチを押す。

エンジンが唸り声をあげて火を吹く。

さて出発するか。

すぐ近くの高速入り口へ、これから東京にトレードだ。

今日は週に1回の大事な取引の日だ。

僕は高揚感を抑えることもなくベームベーのエンジンに激しく鞭を入れ無意味に阪神高速をぶっ飛ばしあっという間に南森町まで到着。

少し混んでるした道をタラタラ新御堂へ。

新御堂は空いている。

梅田のビル群を左の視界に入れたらもう一直線。アクセル全開で新大阪まではすぐだ。

いつもの場所に車を止めて、早足で新幹線乗り場へ。

関東へ

ゼロハリバートンを持つ手を大きく振りながら大股で新幹線のグリーン車に乗り込む。

新横浜で降りて、駅近くのとある喫茶店で、古くからの顧客に大麻を渡す。

札束を受け取りすぐにまた新幹線に乗り込む。

そして今度は品川で降りて、プリンスにチェックイン。

高層階の窓の外、東京の街を見下ろしながら部屋で客を待つ。

ここで東京の顧客に大麻を全部売りつくす。

ゼロハリバートンの中では、スパーレモンヘイズやC99などのブランドバッズが、

顧客ごとに丁寧にパックされて出撃を待っていた。

決まった時間に顧客が現れた。

大麻を現金と交換して、握手をして部屋を去った。

さて、ここからが本日のメインイベントだ。

仕入れ

そうして集めた現金を持って新宿にタクシーで向かう。

覚醒剤とMDMAを大量に仕入れるのだ。

僕の仕入れてくる薬を待ち望んでいる人が大勢いる。


その筋で一番信頼できるKNさんの指定したホテル下のカフェで待つ。

凄みのある声で僕を呼ぶので振り返ると、いかつい面貌のいかにもな雰囲気の彼は現れた。

いつもそうだが、時間に正確だ。

ナニワのポン中たちにも見習ってもらいたい。

世間話もそこそこに、用意してもらう薬物の対価たる札束を渡すと、彼はカフェの中で堂々と札束を数え始めた。

そこは、とある交差点の一角にあるごく普通のカフェだ、

くつろぐサラリーマンや若い女子大生たちの、恐れや軽蔑、そして好奇の入り混じった視線が僕たち二人に集中する。

彼はそんな視線など我関せずだ。

ただ入念に数える。

太い指で札をむんずと掴むや否や、彼の指は機械のような速さでバシバシ動いて少なくない金額をあっという間にカウントしてしまった。

彼は僕に一声断りを入れて、その金を掴んで新宿の街に消えた。

アジトから商品を持ってくるである。

その後僕は、彼の予約しておいてくれたホテルの一室に向かった。

取引を始めた頃は不安だったが、もう何回も繰り返していて今では慣れてしまったいつもの段取りだ。


モルモット君

(そういえばあいつを呼ばないとな)

僕は東京でモルモットを飼っている。

と言っても人間のモルモットだ。

僕は覚醒剤をやらないので、その品質を確かめてもらうためにミクシーでシャブにうるさそうな人と仲良くなったのだ。

その人にお願いして、シャブのモルモットとなってもらっている。

人をモルモット扱い。検査キット扱いするなんてて非人道的だ。

でもモルモット君はそう思ってないようだ。

彼は僕から電話が来ると、いつどこにいても嬉々としてすっ飛んできてくれる。

部屋で待っていると、KNさんが部屋に来た。

すぐ来るといってたのに、今回に限ってモルモット君は遅れている。

困った。

KNさんに謝罪をしてしばらく待ってもらった。

別にそのままもらって帰ってもいいんだけど、ネタの味を確かめることを僕は仕入れの儀式として大切にしてきた。

KNさんは多少不満げだったけど、待ってくれるようだ。

待ってる間、拳銃を弾くときに音が出ない方法など、他では絶対に聞けないブラックトリビアを教えてくれた。

僕がへーへー言いながら興味津々に聞いていると、モルモットの彼はやってきた。

入ってくるなり汗だくで色々言い訳をするものだから、KNさんに頭からどやされて、

すっかりビビって大人しくなってしまった。

かわいそうに。


さて取引だ。

KNさんはMDMAと覚醒剤をある方法で偽装梱包してくれている。

さすがはプロだ。

万が一職質にあってしまっても、このようにするとバレないようだ。

取引先の安全に最大限配慮してくれてありがたい。

大きな袋から、モルモット君にモノのサンプルと謝礼分のネタを渡すと嬉しそうにバスルームに駆け込んだ。

さっきまでビビっていたのが嘘のように満面の笑顔でバスルームから現れた彼は、グレード義太夫のように頭の上で丸を作った。

「とてもいいネタでした」

今回もいいネタを回してくれたようだ。

用事が済んだのでモルモット君には帰ってもらった。


僕はKNさんに向かって

「ありがとうございました。またお願いします。次はもっと買いたいのでたくさん用意しておいてくださいね」

それが取引終了の挨拶だった。

KNさんと僕は部屋から出た。

僕がフロントでチェックアウトしている間に彼は道路に出てタクシーを止めてくれた。

僕は彼の止めてくれたタクシーがドアを開けたのを確認してから、ささっとタクシーに滑り込み品川へ向かった。

このやり方も彼に習ったのだった。

「東京の街中は危険です」

「一瞬たりとも公道を歩いてはいけませんよ。」

再び品川プリンス

頼んでおいた、覚せい剤、MDMAでゼロハリを満タンにして、また品川プリンスに戻った。

東京にシャブの客がいるのだ。時間を厳密に区切り、

客と客が顔を合わさないように工夫してスケジュールを組んである。

僕は彼らに配るためにシャブの塊を崩し、持ってきたパケ袋に分ける。

みなさん十グラム単位で買ってくれる上得意様だ。

今日は3人のプッシャにシャブを売り、一人の農家から大麻を買う。

一人目が入ってきた。

彼は池袋でプッシャをしている人らしい。彼もミクシーで知り合った。

テスト注射をして納得した彼はすぐに現金を支払い、シャブの入ったパケを掴んで部屋から出て行った。

次々と客が入ってきてそしてシャブを打って、そして買っていった。

シャブの客は全て終了した。

さっき仕入れたシャブがここでかなり捌けて効率が良い。

農家の麻生さん

本日最後の商売相手は、千葉の農家だ。

彼は畑を持っており、その隅の目立たない一角でネビルズヘイズを育ててくれている。

彼はすこぶる欲のない人で、とても人には言えない価格で何キロも僕に譲ってくれるのだ。

彼としても一人の客に全てさばいてもらう方が安心だったのだろう。

そしてそれは正しい選択だ。


彼を紹介してくれた東京の若者ケムラー君と一緒に麻生さんがやってきた。

麻生さんはトランクにいっぱい入った千葉県産のネビルズヘイズを僕に渡した。

僕は匂いを点検するためにトランクをチェックしている間、

麻生さんはテーブルの上に置いてあるシャブを見ていた。

(あ、そうだ。片付けるのを忘れてしまった)

「これはシャブですか?」

「そうですよ。せっかく東京に来るのでシャブとMDMAも仕入れました」

それを聞いて二人はとてもびっくりしていたが、

意外なことに麻生さんは僕の持っているシャブを譲ってくれてと申し出てきた。

「シャブもやるんですね」と僕が言うと。

「たまの楽しみです」と麻生さん。

「どうぞ、ただし1グラム2万円ですよ」

そう言うと「そんなに安いのですね。では20グラムください」

そういってさっき僕が支払った大麻の売り上げからポーンと40万円支払ってくれた。

「商売でもしてるんですか?」

そう聞くと彼は

「いえ、これは一年分です」

そういってニコニコしていた。

シャブを一年分持って、少しづつ使うことができる麻生さんのマイペースさと言うか、意思の強さに驚いた。

シャブはハマってしまうと、どんどんエスカレートして、自制心が効かなくなるイメージだったからだ。

ほとんどのポン中はもらったシャブはすぐに使い切ってしまう。

それが0,1gでも20gでもだ。

あるだけ貪欲にやってしまう。そんな人と多く付き合ってきた。

僕がシャブをやらない理由の一つはそこにある。

ただでさえ自分をコントロールすることは難しいのに、これ以上精神力を消耗したくない。


麻生さんは一部上場企業に長年勤めている立派なサラリーマンだという。

そういうところはさすがだなと感じた。

そんな彼が実家の畑で大麻を作り、

休日にシャブでスーパーサイヤ人になっているとは誰も知らないであろう。


何れにしても、僕にとって麻生さんは実りの秋の訪れを知らせてくれる大切な存在である。

こんな彼を紹介してくれたケムラー君には本当に感謝している。

彼は僕のバッズの信奉者で、東京に行く度に僕の大麻を買ってくれる。


大麻好きの3人は今年の千葉の山の恵みである野生化したネビルズヘイズを味わいながら

麻生さんの畑の動画を見せてもらいながら、大麻について語り合った。


今日の収穫

そろそろ日が暮れてきた。

早く大阪に帰らなければ。

二人に別れを告げて、

弟に無事を知らせる連絡を入れた僕は

新幹線に急いだ。

今回は我ながらうまくいった。

グリーン車のシートに身を委ね、心地よい麻生さんの大麻の酩酊感にうっとりしながら、今日1日を振り返ったのであった。

パズルのように上手くはまった取引と、計画と実行にほとんど狂いが生じなかったこと、そしてその取引が与えてくれた果実に満足しながら、ゼロハリバートンとスーツケースを交互に見返した。

懐の財布の札束。

これが今日の仕事の成果だ。

大麻栽培を始めた頃の自分が思っていたような、

スマートな取引に近づいたのでないかな。

ふとそう思って心が満たされた。

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